前回のレクチャーを受けて、
永井荷風『日和下駄』の

「坂は即ち平地に生じた波瀾である。」

という一節が響いた。

僕が RAU を通して「隅田川」を撮影し続けてきたのも、
何の気なしに隅田川沿いを歩いていた際に、ふいに目にした「ブルーシート」が
僕にとってまさしく「平地に生じた波瀾」だったからだ、と思えたからだ。

RAU に参加する前も、隅田川沿いに「ブルーシート」があることは知ってはいたが、
RAU の課題映像を制作するにあたって、
「川からたった数メートルしか離れていない場所に人が居住している」という事実を
鮮明に意識するようになってしまった。

これはレクチャーで三宅さんが言っていた、ある種の「取り返しのつかなさ」のように感じる。

この『隅田川』という映像は、自分のこの経験を映像で表現できないか試したものです。
ファーストカットとラストカットは、同じ場所から撮った隅田川の俯瞰ショットですが、
その間にあるカットの積み重ねで、違った見え方にすることは可能なのか?

そして、もう一つ。
先日柴崎さんが言っていた、

さか【坂】一方は高く一方は低く、傾斜している道

という辞書による定義。

この定義からすると、「川」もある意味「坂」なのではないか?

こんなことを考えながら、自分なりに応答してみました