「坂をつくるための練習」 あとがき 髙橋まり

坂の定義「一方が高く、一方が低い」に加えて、「切り離された上と下をつなぎ、関係性を生み出すもの」と定義する。その関係性は重力及び重力を起因とした人間の身体やものの運動によってつくられていることが多い(坂道を発信する車や子供の身体、下水道etc.)

東京には、武蔵野台地と低地をつなぐたくさんの坂がある。海に向かう潮見坂は、陸と海を繋いでた。

20世紀の建築空間においては、スロープの発明は空間と空間を分断せずにゆるやかにつなげる画期的な発明であり、21世紀の建築家たちもスロープや有機的な形態を探求し展開させている。

cf>「階段を上るのとはまったく違った感覚を楽しむことができる。階段はふたつのフロアを分断するものだが、スロープはふたつを繋ぐものだ」ル・コルビュジエ

近所にある階段を、引越し前の家にあったもので坂にすることを試みた。
分断された2つの地点を滑らかにつなげるための練習。

いずれも人間の身体を支えるには弱い構造だが、ボールのための坂としては成立し、落ち葉で坂を作った時が、前回提出した「習作_坂で遊ぶ」で坂道にボールを転がした時のような目に見えない傾斜を具現化していた。

敷地の候補:
mauerparkの大階段
ベルリンの壁の基礎になってた段差(Bernauerstr.)
何もない空き地の地形の段差
Bornholmerstrasse★
friedrichstrasseの駅前の階段

どんな文脈の段差をつなげるかが重要であり、いくつかの場所(直感的にベルリンの壁沿い)を実際に訪れてみたが、壁はあくまで壁であり、坂をつくるには大掛かりになり、時間的にも難しかった。

一箇所だけ、地形が起因してベルリンの壁を坂が飲み込んでいる場所があり、ここは今回の坂についてのレファレンスになりうるかなと思った。