たぶん窪地に住んでいるのだと思う。

出かけるときは上り坂だし、帰り道はペダルを踏まなくても家までたどり着いてしまう。坂の手前の長い道の勾配は、自転車に乗ってはじめて知った。

近所には傾斜をそのまま残した公園があり、夏になるとダンボールを敷いて滑って遊ぶ親子の姿を見かける。

 

 

住宅地の細い坂道は、車一台が歩行者を避けてぎりぎり通れるほどの幅しかない。近くのスーパーに買い出しに行くとき、遊びながら下校する集団とすれ違うことがある。

以前、道の真ん中で子どもたちが輪になって天を仰いでいたことがあった。視線の先を追うと、電線にナップザックが引っかかっているのが見えた。

 

 

買い物を終えると、さっきとは別の細く急な坂を下りていく。

全力疾走の小学生に追い抜かされたり、カートを押しながら登ってくる人とすれ違いながら下ると、つきあたりには秋葉権現が祀られていて、その傍らにあるステンレス製の丁寧なキャプションには、先程買い物をしたスーパーの名前が添えられていた。

 

 

(小野 晃太朗)